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闇色のソプラノ/北森鴻

今年1月に亡くなった、大好きな作家・北森氏を偲ぶために始めた「北森鴻祭り」。本当は、北森氏のデビュー作から最新作までを順に読んでいくつもりだったんだが、近所の書店にデビュー作を置いているところがなかったので、諦めてこの5作目から祭りを開始した。それなりに読み進めていて感想メモもあるのだが、ブログに書かないから溜まっていく一方。せめて今年読んだ分は今年中に感想をアップしておきたいなぁなんて思っている。
では闇色のソプラノの感想。私自身はネタバレが気にならないから自分でも平気でネタバラシをするんだけど、気にする人もいるだろうから続きを読むでたたんでおく。私のネタバレって大したこと書いてないとは思うんだけど。

巻末の解説によると、この小説のキーワードとも言える夭折の童謡詩人は金子みすずがモデルなのだそうだ。私は金子さんという人のことはよく知らないけれど。知らなくても話の筋に問題はなかったし(知っていたらもっと楽しめたかも知れない)、この人をモデルにした童謡詩人の作だという詩は当然北森氏が作ったものだと思うのだけれど、その詩が実に素敵で、北森氏はすごいなぁと思った。
話的には、好奇心だけで突っ走っていく感じの女子大生・真夜子さんといい、犯人やその家族を追い詰めていくのが好きで刑事をやっているという悪役みたいな真夜子さんの恋人(?)・州内刑事といい、また話の持っている流れといい、なんだかハッピーエンドにはならなさそうだと感じていたのだけれど、本当にハッピーエンドにならなくて悲しかった。何より途中でハッピーエンドに向かっている感じが出てきたから、余計に悲しくなった。だって、州内刑事には確かに変化があったのだ。それは、現在の事件が解決したことによる心境の変化だったのかも知れない。でも、州内刑事は引きずってきたものに決着を付けなくてもいいと思えるくらい、大切で失いたくないと思う存在を見つけて、無理矢理だったのかも知れないけれど、ひとつの決着を作っていたと思う。それでもその闇の原因を引きずり出して、現実を突きつけてしまうこの物語の残酷な流れがすごく悲しかった。避けて通れないことだったとも思うけれど。
全体としては、とても面白かった。最後に明かされる顛末は、ちょっと無理矢理だったと思うけれど。先が気になって気になって、一生懸命読み進める感じは久々だったなぁと思う。